電話ボックスが見る奈良風俗求人応募者

奈良風俗の求人情報が書かれた私が張られたのは携帯電話が一般化されていなかった20年も前の事です。当時東京では雪が降ること自体珍しいことではなく、毎年当たり前のように振り、各地で雪だるまが作ることができるぐらい振り続けていました。そんな20年前の雪の降る寒い日に私は奈良駅前の公衆電話に張られました。私が張られた場所は電話ボックスの中であり、寒さを凌げて非常に助かったのを覚えています(他の奈良風俗の求人情報の中には外で張られている物もあった)。張られた当初は私を見て電話する人はあまり多くはなく、「なんだ、求人募集かい!」と言いながら他のチラシに書かれている風俗店へと電話する男性が多かったです。
(私は何のために存在しているのだろうか…)
たまに私を見て電話を掛ける人もいましたが、全て小学生が10円使って掛けるいたずら電話のみでそんな風に悩む時期も長かったと思います。そんな私が電話ボックスに張られてから2,3か月が経ったある日のことです。一人のあどけない10代の少女が私の張られている電話ボックスに泣きながら飛び込んできました。
「どうしようこれから…継父のDVに耐えられなくなって家を飛び出してきて奈良まで逃げてきたけど…行くところがないよ…ひっく」
何とかわいそうな少女なのでしょうか、継父もDVの意味もよくわかりませんでしたが、少女がつらい目に遭って今後の人生に不安を抱えていることは確かでした。
(なんとか助けてあげたい…)
そう思った時、私の身体はいきなり明らかに発光し始めていたずら書きのない新品の求人情報に生まれ変わったのです。しばらくすると光は収まりましたが、まさかの洗浄に私の動揺は隠せません。
(えっ何で?私生まれ変わった?もしかして生きる意味を見つけたからかな)
勝手に納得していると家出少女が私に書かれた風俗求人情報を見ていることに気が付きました。当時の風俗系のチラシは女の子の写真がデカデカと印刷されていて、キャッチコピーのような説明文が数行書いてあり、お店の名前と電話番号が書いてあるだけでした。
(これだけじゃ少女は電話する気にもならず道に迷ってしまうかもしれない…)
そう思った時、私の身体は2度目の発光を果たしたのです。そして、どういう機能が備わったのか私にはわかっていました。
『(家出で路頭に迷う少女は当風俗店へ。即日寮へ入居可。日給最低4万円補償)』
と念じると私の身体に思ったことが文字として現れるようになったのです。少女は最初は戸惑っていましたが、すぐに寮へと入れることに惹かれて奈良の風俗店へ電話をかけ始めました。
以降私は奈良風俗求人の神秘として祀り上げられることになったのです。